EMDRで過去の辛い思い出にバイバイ!

あのことがなかったら、、

もっと違う人生を生きれた

のではないだろうか。

 

なかったことにしたい記憶。

誰にでもひとつやふたつあるかもしれない。

 

そんな辛い記憶が、過去の思い出となり

症状からも解放されることができるんです!

 

「EMDR」というトラウマ最新心理療法について、

お届けしますね。

 

辛いことを経験したら、どうしてる?

職場で嫌なことがあったり、

階段から落ちたり、

近所の人から訳もわからず怒鳴り込まれたり。

生きてると良いことも悪いことも色々経験する。

 

セルフケアでなんとも対処できないことは、

辛いことを家族や友人など、信頼のおける人に

話すると辛さが軽減されたりする。

 

話すことで安堵感を得られたりされる

ことはわかっているけど、

なぜそうなるのか?

まではまだ研究で解明されていない。

 

一方我慢強かったり、自分に厳しかったり

話できる人が身近にいなかったら、

お酒、ギャンブル、ドラッグ、暴力、ワーカホリック、依存など

不適応な対処法を使って解消しようとするかも知れない。

EMDRとは?

EMDRは略で正式には

Eye Movement Desensitization and Reprocessing

長い療法名ですが日本語に訳すと、

「眼球運動による脱感作と再処理法」。

 

トラウマ記憶処理に特化したPTSD治療です。

Francine Shapiro, PhDが1989年の論文発表で紹介されました。

 

日本には、1996年頃には入ってきていましたが、

2013年のTV番組の特集で取り扱われて

一気に認知が増えました。

 

EMDRはクライエントの目のまえで

指を左右に振ってそれを追うことで

眼球運動により記憶を処理するユニークで

比較的新しい最新のトラウマ治療法になります。

 

また、眼球運動以外に両側における

聴覚や触覚刺激を使うこともあります。

EMDRの特徴

トラウマ治療で効果が認められるものの中に

辛かった記憶にしっかり長時間

向き合う暴露療法があります。

 

向き合い続けることで慣れてきて症状が軽減する

メカニズムなのですが、

1セッション60分維持するとなると、結構キツイです。

ので、なかなか続けられない難点があります。

 

EMDRの場合は、嫌な記憶を思い出すことはするが、

眼球運動(両側性刺激)もやりながらの

「二重注意」を使います。

 

記憶と身体感覚

過去と現在

イメージと視覚感覚

なども二重の注意ですが、

 

「今、何がありますか?」

と聞いていきます。

何かを変えようとすることはなく

ただそのことに気がついてもらって、

両側性刺激とともに処理を進めていきます。

 

その都度気がついたことを

答えてもらうのですが、

答えたくなかったり、

話したくない内容は、

そうしても処理を進めていくこともできます。

 

これって、話したくない人にとっては

負担が少なくなっていいね!

EMDRでどうして記憶の処理ができるのか?

まだ正確な作用機序については

わかっていないので研究が続けられています。

その中で、

適応的情報処理モデル(Shapiro, 2001,2006)

があります。

 

簡単に説明すると、

人の記憶ネットワークの中には、

プラス体験の記憶、

マイナス体験の記憶

がある。

 

プラスの体験記憶には、

成功したり楽しかった、嬉しかった記憶など

思い出すと楽しい、幸せな感じがする記憶。

 

例えば、

運動会でかけっこ1位!

綺麗な山の景色

写真の投稿で表彰された!

上司に褒められた!

 

逆に、マイナスの記憶は、

手術、事故、事件にあった、虐待、いじめ、

など思い出すと辛い記憶のものです。

 

トラウマ記憶は、瞬間冷凍された記憶に例えられます。

EMDRは「凍結した」機能不全へのアクセスとして

両側性刺激をして揺さぶり、

情報を適応的な方へ動かすと考えられています。

それらをなし得る仮説がいくつかあります。

左右脳の働きの違い(大脳半球交互作用説)

日々生きていく中で様々体験するものの記憶は

記憶システムに入っています。

そしてプラスの記憶が多い人は

トラウマ級の辛いマイナス体験にあっても、

何とか肯定的な意味付けなどを行なって

日常生活への適応を行おうとします。

 

肯定的な意味付けを行うのは、

左脳のお仕事。

意識的、言語的、論理的、分析的に

原因考えたり今後の対処を検討したりする。

 

一方、トラウマ記憶は

情動やイメージを司る右脳が働き

左脳の仕事はできていません。

 

大脳半球交互作用説は、

水平方向の眼球運動により、

両半球の活性レベルが揃うか

左半球の処理が行われることとされます。

(Propper & Christian, 2008)

 

REM睡眠との関連

寝ている時、夢を見ている段階は

「REM睡眠」と呼ばれ、

閉じた瞼の中で左右に急速眼球運動をしています。

レム睡眠時間が増えるとうつが軽減、

レム睡眠が減ると抑うつ状態になりやすくなる。

(R. Cartwright, et al.2003)

 

また睡眠中の脳は、目覚めている時

意義が分からない情報を理解、統合

することさえできることが立証されています。

(E.J.Wamsley, et al., 2010)

 

一見すると無関係な記憶どうしの

新たな関係を作り出すのに夢が役立つ

のが発見されました。(M.P.Walker,et al., 2002)

 

過去の記憶の再統合に困難が伴う

PTSD症状にEMDRの効果があると立証するのは、

( R Stickgold, 2002)です。

EMDRの両側性刺激が

REM睡眠に似た脳の処理をして変化できるなら

PTSD患者に睡眠に依存するプロセスを利用し、

効果的な記憶の処理とトラウマ解放ができるはず

という確固たる証拠が存在するとしています。

 

EMDRはマジックではない

では、嫌な記憶を思い出しながら

両側性刺激をするだけで全てのPTSDをもたらす人に

効く万能薬なのか?

 

残念ながらそれは、言い過ぎです。(笑)

画期的な治療法であっても、

人により効果があったりなかったりはします。

 

またEMDRをすぐに使うわけではなく、

厳密なプロトコルに則り

処理を進めていくので、

セッションルームに来て

EMDR1回したら終わり!

とはいかない。

 

次の段階を経て治療は進めらます。

EMDRの8段階
⑴生育歴・病歴聴取
⑵準備
⑶評価
⑷脱感作
⑸植え付け
⑹ボディスキャン
⑺終了
⑻再評価
⑶から⑺は再処理段階で人によっては、
数回の施行で終了となる人もいれば、

治療計画を綿密に立てて、

セッションを重ねて良くなっていく人と

個人差があります。

 

また、マイナスの記憶が多かったり

それが幼い頃の体験だったり

続いているものであったりすると

治療進度はゆっくり進められることも多いです。

 

トラウマ記憶を扱うのに、

急ぐとろくなことはありません。

⑴と⑵をしっかりすることで

治療の成功率が上がるとも言われています。

さいごに

私がEMDRに出会ったのは、

大学院時代のことでした。

 

両側性刺激でPTSDがよくなるなんて!

EMDRを初めて見た時は正直、

「なんじゃこりゃ?」

不思議すぎて衝撃が強かったのを

今でも覚えています。(笑)

 

トラウマによって凍結された

感覚や情動、イメージなどの記憶が

自分が持っているプラスの記憶と

統合し新しいパッケージに仕立て上げる。

 

EMDRはトラウマ解放の一つのツールですが、

人の無限の可能性を感じさせられます。

 

過去を手放して自分の人生を生きなおすのに、

EMDRというツールを試してみる余地はある。