研修などに行った時、座席指定がなかったら
座る位置がワンパターン化していたりしませんか?
なんとなく左前方向の席に座る、など。
普段無意識なのであまり気にしないことも多い行動だけど
バウンダリー(境界線)が関係していることがあるのです。
ソマティックセラピーの観点からバウンダリーと
その修復についてお伝えしていきます。
人には安全に感じられる位置がある
カウンセリングの現場において
初めてのクライエントさんにお会いするとき、
まずお聞きすることがあります。
それは、クライエントさんにとって
どの方向や
位置に座ること
が居心地がいいのか?OKなのか?
なぜなら人が感覚的に持っている固有の
苦手な位置、方角がある場合があるからなのです。
今後二人で共同作業を進めるにおいて
できる限り居心地よく時間を過ごして欲しいので
最初にお聞きします。
居心地がいい=安全に感じられる
セッションへの参加意欲やパフォーマンスなど
色々影響が出る恐れがあるので、
とても大事と考えています。
得意や苦手な位置や距離の存在は、
バウンダリーと呼ばれるもので説明していきます。
バウンダリーとは
バウンダリーとは、
他人や世界と自分自身との関係において
感覚や経験的なものから作られる境界
のようなものになります。
常に外界からくる刺激に対して、
自分の中に取り込むもの、排除するもの
を選別する背景にはバウンダリーがあったりします。
バウンダリーは人の行動も変えます。
苦痛で不快な体験があれば避けるだろうし、
楽しかったらもっとその世界や人と関わりたい
と思って近づいてみることがあるでしょう。
そのためバウンダリーは
大きくなったり小さくなったりなくなったり
変化や柔軟性が伴うものでもあります。
人間関係におけるバウンダリー
この人いつも親切であれこれやってくれるけど、
なんかイライラするんだよなぁ。
こんな感覚があれば、自分のバウンダリーが
その人によって侵害されているかもしれません。
相手は悪気があってやっているわけではないのですが、
好意でも自分にとっては不要なものなら
ありがた迷惑でしかないですよね(笑)
そのときはNoと伝えてその人との間でバウンダリー
を引いて自分を守るかもしれません。
一方、信頼している人や自分を尊重している人の前では、
バウンダリーは柔らかくなります。
もっと私の世界に入ってきていいよ、
とガードを低くして関係性を探求する
挑戦ができます。
しかし、トラウマや虐待にあった人は
バウンダリーが侵害されているので
境界線が曖昧だったり知覚できなかったりします。
バウンダリーは安全地帯
ソマティック(身体的)な観点だと
バウンダリーは他人や世界との境界線なので、
線がビシッと引かれているイメージかもしれませんが、
360度の球体のようなものと捉えます。
前後左右、上下様々にバウンダリーはあります。
保護膜、細胞膜のようなイメージもあるかもしれません。
自分や他人との関わりの中の他のバウンダリーですと、
性的、感情、身体、価値観、責任、お金、時間なども
入ってくるかもしれません。
突然で急激なスピードで来る
ものや人を安全と感じないと
私たちは自動で反応する(闘う、逃げる、凍りつく)
ようにできています。
何か事故や脅威に晒されたとき、
バウンダリーの一部が弱くなったりなくなったり
が起こります。
バウンダリーの破損
突然予期せず事故に遭遇したときなどに
バウンダリーの破損が起こることがあります。
自転車に乗っていたとき、
右前方走行中のバイクが転倒。
そのバイクが横滑りして
自分の乗っている自転車にぶつかって大怪我をした。
このような事故では、物理的なものによって
その人のバウンダリーが突然侵害されてしまった状況です。
事故後、道を自転車で走っているときに、
前方からバイクが来ると異様な感覚や
緊張が高まるなどが残っていましたら
バウンダリーの破損が疑われます。
バイクが来なくても、バウンダリーの破損した右前方
が苦手になるかもしれません。
バウンダリーの破損の影響
バウンダリー破損の影響は、
無意識的に起こっていることがあります。
不快な感覚が嫌でその方向を見ないようにしたり
感じないようにしたりすることなどが起こります。
特定の方向付けができなくなると、
脅威に対する最適な対処能力が
一時的に失われている恐れがあります。
事故の例えでバウンダリーの破損を見てきましたが
ほとんどのトラウマ的出来事の経験の裏には、
何らかのバウンダリーの破損が起きています。
身体など特定の部位などでも起きます。例えば
スノボーで他人に左横から追突された左腕
建築資材が飛んできて当たった右足
などは身体におけるバウンダリーの破損です。
バウンダリーの破損は、他人や世界とのつながり、
関わる時の判断に影響を及ぼしていきます。
バウンダリーが働いているってどんな感じ?
人との関わり方で機能的なバウンダリーがあると、
自分は自分、他人は他人と区別できます。
健全な人間関係は、
バウンダリーが曖昧ではうまくいきません。
親の前で自分のバウンダリーを保つことは
虐待やトラウマがある人でなくても困難かもしれません。
子供の頃から繰り返し繰り返し親の言われた通りに
生きてきた良い子ちゃんだったりすると自分の考えより
親の考えを知らずに取り込んでしまっている場合が多いです。
そういったとき、自分にとって不要な情報を取り込まない、
健全な反応による選択をするのはよほど意識しないと
難しいかもしれません。
また、親にNOと拒絶するとき罪悪感や悲しみなどの感情が
湧いてくるかもしれません。しかし、
親との信頼関係も個人としてのあり方が尊重されないと
バウンダリー侵害と言えます。
バウンダリーを持っている人は、
自分とつながってニーズを把握し尊重しています。
芯があって自信があり
しっかり地に足をつけて
自分で自分の機嫌を取る自己調整ができています。
個として自分が立つことで人間関係においても、
明確にバウンダリーを持ちつつ
適度な距離感で他人と関われるのです。
バウンダリーの修復
バウンダリーが破損しているのはどこか?
に気づくことから修復が始まります。
例えば、背後から他人がぶつかって
転倒して大怪我を負った事故にあったなら
追突された背中側に
バウンダリーの破損があるかもしれません。
明確な出来事が思いつかない場合は、
感覚で使えなくなったり、
知覚にかけているところがないか?確認します。
特定の音や匂い
左横を見たくない
こういった気づきも
バウンダリーの損傷の探求に使っていきます。
実際のセッションでは、
自分にとって確かな感覚を構築していきます。
ワークでは、声を出してNO!といってもらったり
自分のニーズに基づくYES, NOをいってみて
身体で感じてみることをやってみることもあります。
他、様々な角度や感覚を使って取り組んでいきます。
また、人との距離感で安全だと感じられる物理的な距離を
イメージや物を使って体感で感じてもらいながら
把握していってもらうことで
自分のバウンダリーを把握していきます。
これは人によって本当に様々です。
5メートル以上人との距離がないと
安心できない人がいたり
腕を伸ばすとタッチできる距離感でもOK
など人との距離感は色々です。
人と一緒にいてリラックスしていられる物理的距離を
自分が分かっていることは、
何に自分が反応しているか?
を知ることのきっかけにもなります。
また親しいパートナーや友人達に伝えることで
自分の必要な距離感について理解を得たり
自己調整に使うこともできます。
バウンダリーの損傷が把握できたら
そのテーマを取り扱って修復していきます。
最終的には、自分の必要なときに必要に応じて
自分自身を守り防御できるような柔軟性のある
バウンダリーを育てていきます。
人間関係における無数の判断においても
バウンダリーを使ってちょうど良い距離を
自分で調整できるようになっていけると
より自分らしくありながら人と関わっていけますね。